第7回:芸術家のみなさんに知っていただきたい社会保障制度⑥
NPO法人Social Change Agency代表理事、ポスト申請主義を考える会代表、社会福祉士
横山 北斗
はじめに
本連載では、芸術家のみなさんが利用できる社会保障制度について、さまざまな観点から紹介してきました。経済的支援、医療費負担の軽減、子育て・介護との両立、メンタルヘルス支援など、多様な制度が存在します。
社会保障制度は複雑で、すべてを事前に把握するのは難しいものです。しかし、制度を知らなくても、教えてくれる窓口を知っていれば、困ったときに相談して必要な情報を得ることができます。
そこで、最終回となる今回は「最初の相談先」として活用できる代表的な窓口を紹介します。制度について知りたいときや困ったとき、どこに聞けばよいのかを知っておくことで、いざというときの不安を軽減することができるかもしれません。
以下、順番にご紹介していきます。
相談窓口の種類
社会保障制度の多くは、自治体が運営しています。そのため、利用する制度ごとに異なる窓口が設けられています。
- (1) 生活・経済的支援について
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経済的に困ったときに活用できる制度として、生活福祉資金の貸付や住居確保給付金、生活保護などがあります。これらの制度について相談する際は、以下の窓口を利用しましょう。
- 自立相談支援機関(各自治体)
生活に困難を抱える方への支援を行う窓口です。住居確保給付金や生活困窮者向けの支援情報を提供しています。 - 福祉事務所(各自治体)
生活保護を含む、生活困窮者支援全般の相談窓口です。 - 社会福祉協議会(各自治体)
生活福祉資金の貸付を実施しています。
- 自立相談支援機関(各自治体)
- (2) 医療費・療養中の支援について
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病気やケガで医療費の負担が大きい場合、高額療養費制度や自立支援医療(精神通院医療)などが活用できます。これらの制度に関する相談は以下の窓口が適しています。
- 各自治体の国民健康保険窓口
高額療養費制度や限度額適用認定証の申請方法について相談できます。 - 障害福祉課(各自治体)
自立支援医療(精神通院医療)や障害福祉サービスに関する情報を提供しています。 - 年金事務所(日本年金機構)
障害年金の申請手続きについての相談が可能です。
- 各自治体の国民健康保険窓口
- 近年、多くの医療機関では、医療ソーシャルワーカーなどと呼ばれる福祉の専門職を雇用しています。社会保障制度についても詳しいため、外来や入院でかかっている病院の医療ソーシャルワーカーに尋ねていただくこともお勧めします。(以下(4)のメンタルヘルスの相談も同様です)
- (3) 子育て・介護の支援について
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子育てや介護を両立するための支援制度については、以下の窓口に相談するとよいでしょう。
- 子育て支援課(各自治体)
子育てに関する相談に加え、一時保育、病児保育、ファミリー・サポート・センターなどの子育て支援サービスを案内しています。 - 地域包括支援センター(各自治体)
介護に関する相談窓口で、介護保険サービスの利用方法などを説明してもらえます。
- 子育て支援課(各自治体)
- (4) メンタルヘルスの相談について
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心の不調を感じたとき、一人で抱え込まずに専門機関へ相談することが大切です。名前を名乗らずに相談することもできます。
- 精神保健福祉センター(各都道府県・政令指定都市)
メンタルヘルスに関する相談を無料で受け付けています。 - こころの健康相談統一ダイヤル(全国共通)
電話相談が可能な窓口です。自治体ごとに対応時間が異なるため、事前に確認してください。 - 労働基準監督署(労災保険関係)
仕事が原因でメンタルヘルスの不調を来した場合、労災保険の適用について相談できます。
- 精神保健福祉センター(各都道府県・政令指定都市)
まとめ
繰り返しになりますが、制度は知らなければ利用することができません。「どんな制度が自分の状況の助けになるか分からない」というときは、ぜひ今回ご紹介した窓口に問い合わせてみてください。窓口の職員は、市民からの相談や問い合わせに対応することが仕事ですので、遠慮は不要です。何かに悩んだとき、まずは一歩踏み出し、相談することが解決への第一歩となります。
これまで6回にわたり、芸術家のみなさんに向けて社会保障制度を紹介してきました。
このコラムが、芸術家のみなさんの生活を支える一助となれば幸いです。末永い芸術活動を支えるためにも、必要なときには社会保障制度を上手に活用なさってください。
最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。