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第5回:芸術家のみなさんに知っていただきたい社会保障制度④

NPO法人Social Change Agency代表理事、ポスト申請主義を考える会代表、社会福祉士
横山 北斗

はじめに

第4回のコラムでは、医療費の軽減制度・療養中の支援制度についてお伝えしました。
今回は、芸術活動と子育てや介護の両立をサポートする制度についてご紹介します。

フリーランスの芸術家のみなさんの中には、不規則な活動時間や収入の変動など、特有の課題を抱えながら子育てや介護に取り組まれている方も多いのではないでしょうか。そのような状況で活用できる支援制度について、具体的な事例とともに見ていきたいと思います。

子育て支援サービス

芸術家の方々は、公演やリハーサル、レッスンなどで、夜間や休日の活動が多くなりがちです。そんな時に活用できる子育て支援サービスをご紹介します。

(1)一時保育
一時的に子どもを預けたい場合に利用できます。利用時間は1時間から数時間程度で、0歳から就学前までの子どもが対象です。費用は自治体によって異なりますが、時間単位で設定されていることが多いです。
(2)トワイライトステイ
夕方から夜間にかけての公演やリハーサルがある場合に、特に便利なサービスです。例えば、夜の公演がある場合、子どもを夕方から預けることができます。自治体によってサービスの詳細は異なりますので、お住まいの地域の子育て支援課にご確認ください。
(3)ファミリー・サポート・センター
地域のボランティアが子どもを預かる制度で、より柔軟な対応が可能です。例えば、保育所への送迎と組み合わせたり、自宅での預かりを依頼したりできます。利用時間は支援者との相談で決められるため、不規則な活動スケジュールにも対応しやすい特徴があります。
(4)病児・病後児保育
子どもが体調を崩して保育所に預けられない場合でも、公演や重要なリハーサルなどがある場合には、このサービスを利用することができます。医師の診断書が必要な場合がありますが、自治体の補助により利用料金は比較的抑えられています。

これらのサービスを効果的に活用するためには、事前の準備が重要です。
まず、一時預かりやファミリー・サポート・センターなどのサービスは、初回登録が必要となります。急な利用が必要になる前に、あらかじめ登録を済ませておくことをお勧めします。
また、差し迫った利用の予定がなくても、一度試しに利用して実績を作っておくと良いでしょう。子どものことを保育施設やファミリー・サポートの支援者に知ってもらっておくことで、緊急時の対応もスムーズになります。

サービスの利用にあたっては、自治体ごとに規定や条件が異なることにも注意が必要です。申し込みの期限や利用可能な時間帯は、地域によって様々です。例えば、ファミリー・サポート・センターの利用時間が厳格に定められている自治体もあります。事前に市役所の子育て支援に関する課に詳しく確認しておきましょう。

ご自身の状況に合わせて複数のサービスを組み合わせることもお勧めです。例えば、保育園の一時預かりで18時まで預かってもらい、その後はファミリー・サポートの支援者に迎えに来てもらって21時まで見てもらうといった方法などもあります。ご自身の仕事に合わせて、最適な組み合わせを見つけることが大切です。

介護保険サービス

介護保険制度は、40歳以上の方が加入し、原則65歳以上の方が要支援・要介護認定を受けることでサービスを利用できる制度です。40~64歳の方も、特定疾病により介護が必要となった場合は利用可能です。サービス費用の1~3割を自己負担し、残りは保険で賄われます。

芸術活動をしながら親の介護に直面する方も増えています。介護保険サービスを上手に活用することは、介護の負担を軽減し、芸術活動との両立を助けてくれます。以下、サービスをいくつかご紹介します。

(1)訪問介護
ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事、入浴、排せつなどの介護や、掃除、洗濯などの生活援助を行います。レッスンや創作の時間を確保しながら、家族の介護を両立させることができます。
(2)通所介護
日中、介護が必要な家族をデイサービスセンターで預かってもらえるサービスです。入浴や食事、機能訓練などのサービスが提供され、その間にレッスンや創作活動に専念することができます。
(3)ショートステイ
数日間の公演や遠方での活動がある場合、介護が必要な家族を一時的に施設で預かってもらえるサービスです。最長で連続30日程度の利用が可能です。

介護保険サービスを利用するには、まず地域包括支援センターに相談してください。センターでは、介護保険の申請手続きから、具体的なサービスの利用方法まで、総合的な相談をすることができます。地域によって名称が異なりますので、検索する場合は「高齢の方が住んでいる地域+地域包括支援センター」と検索してください。

子育てや介護は継続的なことですので、一人で抱え込まずに、支援制度を積極的に活用することが大切です。

次回は、メンタルヘルスの不調を抱えたときの支援制度についてご紹介します。