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【調査研究】5/9ブロードウェイ俳優を迎えてセミナーを開催しました(レポート)

芸団協

2024年7月23日

2024年5月9日、芸団協正会員団体及びマスコミを対象としたセミナー「俳優の仕事と社会保障を語る~ブロードウェイ俳優、米国俳優協会会員を迎えて」を開催しました。

このセミナーは、社会保障研究の一環として行ったもので、芸団協が提言している「芸術家のための互助の仕組み」の実現に向けて、先進的な取組をしているアメリカの事例を学ぶ目的で企画されました。


登壇したブロードウェイ俳優の由水南(ゆうすい みなみ)さんは、アメリカの舞台俳優や舞台監督の労働組合「米国俳優協会(Actors‘ Equity Association)」の会員でもあり、2023年より、その諮問委員会、Equity‘s Advisory Committee on Chorus Affairs の委員も務めています。


舞台やテレビで幅広く活躍する俳優、大滝寛さん(劇団文学座/日本新劇俳優協会専務理事)を聞き手に、第1部では由水さんが金沢から渡米し、ブロードウェイ俳優になるまでの紆余曲折や、日本の演劇界との働き方の違いについて伺いました。

第2部では、アメリカにおける実演家の労働組合と社会保障について伺いました。米国俳優協会がプロデューサーや劇場等の団体と締結した団体協約により、最低賃金や労働条件が厳格に守られていること、団体協約に基づき労使共同での医療保険や年金の基金が運営されているだけでなく、NPO法人による医療や住居の提供や教育訓練等により、業界全体で支える実演家のセーフティネットが構築されていることが語られました。


質疑応答があった後、大滝さんからは、
「コロナ禍の経験で舞台芸術に関わる人たちが仕事や自らを守ることに目覚めたと思う。文化庁『文化芸術活動の継続支援事業』で、文化芸術活動を仕事として証明できたのが第一歩。『芸術家のための互助の仕組み』実現のためにも、今日の話を参考にもっと周知しなくてはならない。実演家自身ももっと興味を持っていく必要がある」
由水さんからは、
「アメリカでは常に経済界のトップと交流し、実演芸術が心の豊かさにいかに貢献しているかが理解されているので、気持ちよく寄付してくれる。関係者だけでなく、業界の垣根を越えて理解をしてもらう必要がある。学界とも協力して、実演芸術の社会的価値、経済的価値について数値化することも大切」
との指摘をもって、2時間のセミナーが終了しました。
アメリカの先進的な取組を知り、日本の現状と今後の進むべき方向に思いをはせる非常に貴重な機会となりました。


なお、本セミナーの様子は、芸団協の社会保障研究とともに、NHK総合「午後LIVEニュースーン」(2024年5月10日放送)にて取り上げられました。ニュース記事(テキスト形式)は、下記URLでもご覧いただけます。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240510/k10014445611000.html




由水 南(ゆうすい・みなみ)

ブロードウェイ俳優 / YUプロジェクト 主宰(セミナー、オンラインプログラム運営)

石川県金沢市出身。米国ニューヨーク在住。高校卒業後に渡米し、現地の演劇学校を卒業後、全米各地の劇場で『メリー・ポピンズ』『アイーダ』『キャッツ』など、多数の舞台に出演。日本では、劇団四季で『ウィキッド』『美女と野獣』『鹿鳴館』に出演し、日本初演の『春のめざめ』では、翻訳家・演出助手としても携わる。再渡米後の2015年、渡辺謙主演の『王様と私』でブロードウェイデビューを果たし、その後も『ミス・サイゴン』『マイ・フェア・レディ』でブロードウェイ出演を続ける。『マイ・フェア・レディ』では、アジア人の女性俳優として唯一の出演者に選ばれ、俳優陣のリーダー役であるダンスキャプテンも務める。

俳優活動と並行して、2014年にYUプロジェクトを発足し、講演、セミナー活動等を通して可能性を広げるメッセージを発信。2023年に初の著書『今日から始めるSHOW UPの習慣』(イマジカインフォス)を出版。 https://www.yu-project.org/


大滝 寛(おおたき・ひろし)

俳優 劇団文学座/日本新劇俳優協会 専務理事/日本俳優連合 所属

1959年生まれ。1981年、文学座附属演劇研究所に入所、1983年『シラノ ド ベルジュラック』で初舞台。1986年より文学座座員となり、舞台、映像、吹替など幅広く活躍。近年の出演作に、新国立劇場『リチャード二世』、こまつ座『雪やこんこん』(演出:鵜山仁)、CATプロデュース『検察側の証人』(翻訳・演出:小川絵梨子)、文学座『欲望という名の電車』(演出:高橋正徳、於:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA)、オフィスコットーネプロデュース『磁界』(脚本・演出:中村ノブアキ)、演劇集団Ring-Bong『シングルファザーになりまして』(作:山谷典子、演出:藤井ごう)、新国立劇場『デカローグ7』『デカローグ8』(2024年6月)など。ほかに、ドラマ出演では『青天を衝け』『ちむどんどん』『仮想儀礼』、吹替出演では『Lupin/ルパン』『アストリッドとラファエル 文書係の事件録』など。


米国俳優協会(Actors’Equity Association/エクイティ)

1913年に設立されたアメリカの労働組合。5万人を超える俳優や舞台監督などを会員とし、劇場等の使用者団体と協約を締結し、最低賃金をはじめとした会員の労働条件の改善や福利厚生の充実を図っている。

また、Equity-League Benefit Fundsが、米国俳優協会会員向けに医療保険、年金保険、401(k)(確定拠出年金)を提供している。この基金の理事会は、米国俳優協会と事業者で構成されており、労使が共同で運営する独立組織となっている。