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インタビュー「あの先生の “キッズ時代”」芳村伊十冶郎先生(三味線)

2020.12.04 コラム

先生たちの”キッズ時代”や”たからもの”にまつわるエピソードを紹介する新企画。
お稽古場ではなかなか見えない先生方の「素顔」を、少しだけお伝えしていきます。

今回は、長唄/三味線コースから芳村 伊十冶郎(よしむら・いそじろう)先生です。
いつもさわやかな伊十冶郎先生に、ご自身の”キッズ時代”について文章をお寄せいただきました。


三味線の音色に魂を奪われ、西洋音楽から邦楽の世界へ

— お稽古をはじめたきっかけを教えてください。

私の場合は“キッズ”ではないのですが、大学進学も決まった高校3年生の冬休み、なんとなくつけていたテレビから流れてきた長唄三味線の音色に 身体に電気が走ったような衝撃を受けまして、魂(たましい)を奪われました。「なんて心地よくきれいな音色なんだろう……弾いてみたい!」と思い立ってすぐ行動、近所で三味線を教えてくれる先生を探して習いにいきました。
それまでの“キッズ時代”は、実はクラシック音楽が好きでファゴットやサクソフォン、ヴァイオリンなど、西洋音楽の楽器には親しんでいましたが、日本の楽器にこれほどハマるとは思いませんでした。
写真は、プロを志して師匠に弟子入りした修業時代。24、5才のころだと思います。師匠のお弾き初めで勉強させていただいています。憧れの師匠の音色を一日中聴いていられる幸せと、たくさんの曲を覚えなくてはならないプレッシャーとの間で、ただがむしゃらに三味線と向き合っていました。


photo: 左から、師匠の芳村伊十七先生、兄弟子の芳村伊十一郎さん、若き頃の伊十冶郎

いつも寄り添ってくれる三味線への恩返し

— なぜ、これまで続けてこられたとお考えでしょうか。

三味線という楽器そのものが大好きなのが続けてこられたいちばんの理由です。弦楽器とも打楽器ともいえない音色が魅力。楽しいときもつらいときもいつもそばに寄り添っているのが三味線であり、長唄という音楽でした。
プロを志してからの修業時代はつらいこともたくさんありましたが、三味線が好きだったのでやめようと思ったことはありません。今では、次の世代に三味線をしっかり継承(けいしょう)していきたいという使命感をもって活動しています。それが三味線にできる私の恩返しです。

古くさくなどない、たくさんのことを教えてくれる楽器

— お稽古を始める子供たちへメッセージをお願いします。

三味線は日本が誇(ほこ)る素晴らしい楽器です。伝統的な楽器といわれますが、私は古くさいなどと思ったことは一度もありません。いまの時代を生きている私たちにも、たくさんのことを教えてくれる楽器です。
18才の時にはじめて三味線に出会った私からすると、いまの皆さんの年齢で三味線に触れるチャンスがめぐってきたこと、うらやましくて仕方ありません!
お稽古では、本物の楽器を扱いますので、そこは厳しく指導します。姿勢や弾き方をしっかりと身につけると、あとは楽しい楽器です。どうか真剣にお稽古に取り組み、三味線の楽しさを感じてほしいと思います。 [寄稿]

 
photo: (左)最近の舞台より
(右)キッズ伝統芸能体験 発表会 プロ実演より 上段中央(2019年)撮影:武藤奈緒美

*キッズ伝統芸能体験 講師紹介(プロフィール)はこちらから