2017.03.31
アーツマネジメント講座2016 講座15『個人と文化芸術~制作者はなにをつくるのか?』1月24日レポート
講座15は、制作者とは何なのか、その根本を考えます。
劇団うりんこ・平松隆之さんを招き、ご自身の制作者としての活動について伺いながら、個人と組織の関係についても迫ります。
●劇団うりんこについて
劇団うりんこは、1973年に創立された児童劇の専門劇団。1986年には、専用の「うりんこ劇場」を名古屋市にオープンしました。
現在、劇団員は41名で、全国、海外で活動しています。
しかし、劇団うりんこでは、座付きの作家・演出家はいません。作品をつくるときは、創造委員会で、それぞれがどんなものに取り組みたいか、何が今の子どもたちに必要かを話し合い、1年ほどかけて、やりたい演目に合わせて作家や演出家を探し、作品をつくっているのだそうです。
2016年は、教育現場での公演を主軸に年間500ステージ以上を上演し、その他、学校、地域での表現活動のワークショップにも力を入れているといいます。
平松氏は、2006年に劇団うりんこの制作部に入りました。現在、制作部長になって3年目。
入団当初から、働き方における「個人と組織」の在り方について意識してきたことは、「互いが互いを必要とする関係」もしくは「互いが互いを認め合う関係」だといいます。
これは、自立した個人が何かの目的のために集まってきているという状態で、劇団うりんこもそういう性質を持った団体であり、常に自分のやりたい事、やる
べき事は何かを意識して仕事をしてきたのだそう。
入団当初は組織の仕事に慣れつつ、それ以外に「何か自分でやりたい事」として取り組んだのが「弟の戦争」という作品。この作品は、劇団うりんこのレパートリー作品のひとつでしたが、興業的な理由などから劇団の中では終息しそうでした。この作品をどうしても今の若い人たちに見せたいという思いが強くあり、自分でこの公演をつくる活動や関連するセミナーなどを企画したのだそうです。
また、劇団の公演制作と並行して、個人としても活動を広げます。
2010年には「あいちトリエンナーレ」の枠の中で、演劇祭や演出家のトークイベント、ワークショップなどを企画。また、名古屋学生演劇祭のアドバイザーを務め、そうした活動が、静岡芸術劇場SPACでの合宿ワークショップの実施や、全国学生演劇祭の活動にまで広がっています。
演劇制作以外にも、人材育成や教育活動など、活躍の幅を広げています。
こうした個人としての活動の大元には、劇団うりんこが劇団内外でのネットワーク作りを重視してきた土台があるといいます。劇団は創造集団だけれども、長く活動していると内向きになりがち、発想が固定化しがちになります。劇団うりんこが作家や演出家を外部から求めるのも、内向き・発想の固定化を避けるための組織理念だったのでしょう。
個人と組織の関係においては、「個人の気持ちの集合体が組織である」という平松氏の言葉が印象的でした。
●やりたいことを考えるワークショップ
後半は、数人ずつのグループに分かれ、自分が実現してみたい事を発表し合うグループディスカッション。
受講者からは、「原発事故を題材に戯曲を書きたい」「海外公演を実現したい」「音楽祭を開催したい」など、具体的な将来の希望が発表されました。その実現に向けて、他の人から客観的な意見をもらうことで、今後のそれぞれの芸術活動のヒントを探る機会にもなりました。
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講座15 個人と文化芸術~制作者はなにをつくるのか?
【日時】平成29年1月24日(火)18:30~20:30
【会場】沖縄産業支援センター
【講師】平松 隆之(劇団うりんこ制作部長)