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2016.09.19

アーツマネジメント講座2016 講座①『沖縄芸能のこれから~琉球から未来の沖縄へ、芸と心の継承を考える』7月30日レポート

○okinawa seminar2016_July今年も始まりました「アーツマネジメント講座2016」。
これから年明け1月にかけて、多彩なテーマ・講師で開催していきます!

第1弾は、沖縄芸能。

『沖縄芸能のこれから~琉球から未来の沖縄へ、芸と心の継承を考える』と題して、重要無形文化財「組踊立方」各個認定保持者(人間国宝)の宮城能鳳さんと、沖縄の伝統芸能研究者の第一人者である琉球大学教授の大城學さんに、沖縄の伝統芸能・組踊(くみおどり)の現状をふまえて、この芸能を未来にどう発信していくか、対談形式でお話しいただきました。

dsc00963まずは現在、組踊を取りまく環境について。
組踊は1972(昭和47)年5月、国の重要無形文化財に指定され、翌1973(昭和48)年度から、伝統組踊保存会による伝承者養成事業が開始されました。
当時30代前半だった宮城氏は、立方保持者の眞境名由康氏らの教えを受け、伝承者として組踊の将来を担う決意を新たにしたと言います。
1990(平成2年)4月には、沖縄県立芸術大学が設置され、音楽学部 琉球芸能専攻において、組踊などの沖縄伝統芸能が専攻できるようになりました。
その後、2005(平成17)年4月、国立劇場おきなわにおいて、組踊(立方・地方)研修生が設置され、現在、第四期生が研修中です。

dsc00948このように、若い継承者を育てる取り組みが進むなか、具体的にどのように稽古が行われているのかという話に。
まずは、教授する側の稽古の在り方について。
能鳳先生は、一番大切なことは、発音、所作、舞踊、歩みなどの基本を、徹底して教えるということだ、と強調されました。
組踊の台詞は、琉球の古典語で書かれており、現在の生活では消えている組踊独特の発音、抑揚を必要とします。
今の若者には、馴染みのないこの発音がなかなか難しく、繰り返しこの独特の発音を、ときに厳しく指導していく必要があるとも。
また、所作、歩みなどの動きは全て琉球舞踊の基本からなっているため、舞踊をしっかり踏まえた上で、発音・台詞を極めることが大切なのだそうです。
この組踊独特の発音、舞踊の基本ができていないと古典とは言えず、現代演劇と同じになってしまうという認識を徹底することが、指導する側の在り方として重要だと述べられました。

dsc00956次に、教わる側の在り方について。
立方(たちかた)においては、まず第一に舞踊を徹底的に踊り込むこと、と能鳳先生は強く述べられました。
組踊の立ち居振る舞い・所作の基本は舞踊であり、舞踊がしっかり身についていることが大事であることは、先述の指導者の在り方のなかでも強調されています。

そして、組踊におけるいろいろな役をこなすには、女踊、二歳踊、偏らずにすべての舞踊の素地・基本をしっかり身に着けるべきと言います。

演者であると同時に、将来は指導者となる覚悟をもって、若いうちにはいろいろな役を演じ、普段の稽古から台本読みを徹底すること、詞章研究を怠らないことなど、長きにわたり演者として活動されてきた能鳳先生の言葉は深く心に刺さります。

また、地方(じかた)も、まずはしっかりと歌い込むこと。
立方と同じように、基本である台本読みを徹底し、詞章研究をすることで、歌詞の意味を熟知することが大切であると言います。

立方、地謡ともに、教わる側の心得として、能鳳先生が60年あまり稽古に取り組む際に心に抱いてきたという、世阿弥による「見・聞・心」という言葉を教えてくださいました。
「見(けん)」とは、師匠の技をしっかりと見ること。見る目を養い、見極める力をつけること。
「聞(もん)」とは、素直に師匠の言葉を聞く姿勢。
「心(しん)」とは、理解する心、芸術の心を意味します。
この「見・聞・心」の姿勢をもって、日々の厳しい稽古に精進してほしいと、お気持ちをお話されました。

そして、お話は、舞台公演の心得について。
立方においては、化粧や衣装にも、役柄にあっているか、髪型や着付け、化粧も理にかなったものであるかという見極めと注意が必要だといいます。
また、小道具の大切さ、琉球独特の化粧や衣装について深く理解すること。
そして、楽屋に入ると、鏡の前で、頭のなかでも役作りをしながら、化粧をし、着付けをする。
頭のてっぺんからつま先まで、すべてで技芸を表現していくという気持ちを持つことが重要と説きます。

地方も、舞台を生かすも殺すも地謡次第であると心得ること。
そして、一番いい状態で稽古の成果が発揮できるように心掛けることが大切であると言います。

dsc00966そして最後は、組踊の将来をどのように描いているか、という話に及びました。
大城先生、能鳳先生お二人ともから、古典を継承していくためには、その時々の文化から生まれてくる新作が必要であること、ただしその際にも組踊の「様式」を大事にしてほしい、との話がありました。
組踊は、「型もの」であり、独特の演技、衣装などの約束事があります。
この「様式」は大切にしながら、品格ある上質の舞台を作っていってほしいと言います。
組踊は、「聞く芸能」とも言われるそうです。観客は聞くことで、舞台上にはない背景などを想像できます。
過剰な演出に頼らず、約束事や沖縄独特のウチナーの匂いを大切に、舞台をつくっていってほしいとの願いが語られました。
また、琉球王国時代につくられた組踊の台本をもとに、新たに舞踊の振付、構成、演出をくわえた復活作品の取り組みへの意欲も語られました。

大城先生による組踊の魅力や歴史のお話、能鳳先生の数十年にわたる活動のなかでのヒヤヒヤした体験談も交えた楽しい講座となりました。

お二人の言葉の端々に、琉球芸能の未来を背負う若い演者・観客へのエールがこめられていたような気がします。


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講座1 『沖縄芸能のこれから~琉球から未来の沖縄へ、芸と心の継承を考える』

【日時】2016年7月30日(土) 13:00~14:45

【講師】宮城能鳳(重要無形文化財「組踊立方」各個認定保持者(人間国宝)、宮城本流鳳乃会家元)
   大城 學(琉球大学 法文学部教授)

【会場】那覇市IT創造館

 

 

 

 

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