2015.09.28
アーツマネジメント連続講座 講座⑦『会計の基礎』6月27日レポート
連続講座の第7回は、会計講座のエキスパートである久留米大学商学部教授の田坂公先生をお招きして『会計の基礎』について学びました。
田坂先生は文化芸術にも造詣が深く、芸団協が芸術団体の実務担当者向けに過去に実施したセミナーやEラーニング(~2011年)でも、「芸術団体のための財務会計」などの講師を務められてきました。
昨年に続いて2回目となる今回は、昨年の受講者アンケートで「もっと集中的に学びたい」という声に応え、一日計4時間の集中講義となりました。
田坂先生は講座の冒頭で「sustainability(持続可能性)が今日の講座の影のテーマです」と述べられました。
講座6(6月15日)の大和滋氏の回でも確認した通り、芸術団体の多くは非営利組織なので「儲けること」は目的にしていません。しかし、儲けないからといって赤字が続くままでは、活動ができなくなってしまいます。
どんなに素晴らしい活動でも、継続できなければ意味がありません。
その活動の継続を支えるのが、「会計」の大事な役割です。
また、「会計」は英語で「accounting」と表記されますが、「account」には「説明」という意味もあります。
会計はただ単にお金の流れを管理するだけでなく、団体・組織の活動状況を説明、報告する大切なツールなのです。
まずは、「会計とは何か」ということで、会計には「財務会計」と「管理会計」の2種類があることを学びました。
財務会計は通常「簿記」によって記録・計算・整理されるもので、融資や支援、助成金などを得る上でも必要不可欠です。
管理会計は「経営会計」とも言われるもので、団体の規模を拡大するか否かなど活動の方向性を決めるための会計とされています。
芸術団体の運営にはどちらも重要ですが、今回はより実務的な財務会計および簿記の入り口について学んでいくことを確認しました。
次は「芸術活動と会計のつながり」について。
芸術団体の多くが非営利であるとは言え、法人である以上は消費税や法人税などの納付義務があります。そして、活動に見合った適正な額を納税するためには、「儲けていない」ということを証明する必要があります。
ここでは、「チケットセールスなどの収入から税法上認められた経費を差し引いたものが所得である」という定義を確認し、税法上「儲かっていない」状態を説明するには収入ではなく所得の状態を説明する必要があることを学びました。
法人格を有していない任意団体でも、税務上は「みなし法人」として同じ扱いを受けることができますが、そのためには会計報告がきちんとできることが必須です。
助成金や融資を受ける際にも当然同じことが言えます。
いよいよ、「複式簿記のイメージ」と「財務諸表(決算書)」について話題が進みます。
通常、「貸借対照表」(B/S)と「損益計算書」(P/L)の関係性を一回で理解するのはなかなか難しいのですが、オリジナルのスライドを使用した田坂先生の分かりやすい解説に場内からも思わず「おぉ!」という感嘆の声が聞こえました。
休憩をはさみ、講座の後半は「決算について」から。
どのような法人でも期末には決算を行っていると思いますが、決算にはどのような意味があって、どのような手続きの順序を踏まなくてはならないのかをちゃんと理解して行っている団体は少ないかもしれません。
ここでは、決算の予備手続きから本手続を経て、財務諸表を作成するまでのプロセスについて学びました。
また、融資を受ける際、過去数期分の決算書に加えて直近の試算表の提出を求められることがあります。
「貸借対照表」(B/S)、「損益計算書」(P/L)につづいて、複式簿記の「貸方」「借方」の考え方を整理しながら、試算表のチェックの仕組みについて見ていきました。
この仕組みが理解できると、試算表から「貸借対照表」(B/S)、「損益計算書」(P/L)を作成することができるようになります。
最後は練習問題と身近な事例の研究でより理解を深めました。
よく知られている有名企業でも、その財務諸表を見ることで違った一面が見えてきます。
さらに、ある架空の芸術団体を想定した「貸借対照表」(B/S)、「損益計算書」(P/L)を使って決算のシミュレーションを行いました。
一般企業の例では出てこなかった「出演費」や「会場費」、「文芸費」といった項目が登場することで、芸術団体の会計について現実味が高まり、理解しやすくなったのではないでしょうか。
終了後のアンケートでは「とても分かりやすくて驚いた」「シンプルな説明でわかりやすく、よく理解できた」といった声が多く聞かれました。
この講座を通して、芸術団体における会計の重要性は認識できたでしょうか。
自身が会計担当でなくとも、団体の会計資料を見て、活動状態を理解する力を身につけることはとても大切です。
ここでの学びを皆さんの活動のなかで実践するとともに、一緒に活動する皆さん同士にも知識を広げ、活かしていただきたいと思います。