2014.10.16
アーツマネジメント連続講座 講座⑩『劇場と技術―その基礎と安全』10月7日レポート
6月から行ってきた連続講座もついに最終回。
今回は会場を浦添市の「てだこホール」に移し、新国立劇場の伊藤久幸さん、さいたま芸術劇場の岩品武顕さん、びわ湖ホールの押谷征仁さんを講師に迎えて劇場と技術に関する講義を行って頂きました。
音響パートの講師をお勤めくださるのは、びわ湖ホール舞台技術課チーフの押谷さん。
そもそも音響とは?という話から、しばしば耳にする“PA”と“SR”の違い、ハウリングが起こる原因、劇場のおける音響技術者の職務内容など、ともすれば難しくなりがちな内容をとてもシンプルにわかりやすくご説明くださいました。
音響概論に続いて、劇場のおけるさまざまな音響効果を実際の出音を聞きながら確認しました。スピーカーの左右バランスが悪くなったときに発生する位相のズレを自分の耳で体感するために、受講者一同でホールの客席を右に左に大移動。言葉では何とも説明しづらい体験に、受講者から思わず驚きの声があがります。
音響のパートの最後に行われた押谷さんと伊藤さんのミニトークコーナーでは、安全を確保するための無理のない作業時間の確保など、アートマネージャーに求められる時間調整力について問題提起がなされました。
つづいては、さいたま芸術劇場の岩品武顕さんによる舞台照明に関する概論。
百聞は一見にしかずということで、さっそく受講者全員でステージ上に上がって、実際に灯体に触れながら、それぞれの照明器具の役割や照明効果の違いを学びました。プロの照明家から直接話を聞ける貴重な機会とあって、受講者からのたくさんの質問が飛び交っていました。
照明のパートの最後は、琉球舞踊家の仲里綾香さん(玉城流 踊ぃ飛琉)をモデルに迎え、先ほど触った照明器具がどのようなシーンでどのように使用されるのかを客席から観賞。僅か数分のオペレーションながら、一つの舞台作品を見たかのような時間が流れました。
休憩をはさんで、後半は新国立劇場の伊藤久幸さんによる大道具の仕込みについてのお話から。新国立劇場で実際にセットが仕込まれている様子を定点カメラでおさめたものを早回しで再生しながら、巨大で複雑な舞台装置がどのように組み上げられていくのか、安全への配慮という視点からご説明くださいました。
全体の最後は講師3人が揃って登壇し、舞台技術に関する安全ガイドラインについての講義。
舞台技術者のみならず、アーツマネージャーから実演家まで、舞台に関わるもの全員が認識しているべき舞台制作上の安全ガイドライン、つまり安全に舞台を作り上げるうえで「すべきこと」「してはならないこと」について皆で学びました。
13時から17時までの長丁場でしたが、アンケート結果からも大変満足度が高かったことがうかがえる、連続講座最終回にふさわしい充実した内容の講座となりました。