GEIDANKYO 公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会[芸団協] 芸能花伝舎 沖縄県

HOME

2017.03.31

アーツマネジメント研修派遣 平成27年度研修修了者報告会(9月25日)レポート[報告:宮城紗来氏、石山裕也氏]

基調講演につづき、研修修了者からの報告です。
6ヶ月間の研修内容に加え、沖縄に戻ってきてから現在の活動、そして今後の展望についても話されました。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


宮城 紗来
(現在:公益財団法人沖縄県文化振興会 文化専門員)

【研修先】公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団/ロームシアター京都
【研修期間】平成27年9月24日~平成28年3月18日


・研修先と志望動機

ロームシアター京都にて、約6ヶ月の研修を実施。研修派遣以前は、(公財)沖縄県文化振興会でプログラム・オフィサーとして勤務。県内の文化芸術事業者への支援を行う中で、マネジメント人材の不足とその必要性、また自身の経験値向上の必要性を感じ、研修を志望した。
日本文化が根付く京都で、沖縄の文化芸術振興に関する様々な着想を得られるのではないかという期待と、2016年1月にリニューアルオープンを控えたロームシアター京都でオープン前後の実務を経験することにより、劇場運営の基礎部分を構築していく過程を学ぶことができるのではと考え、研修先に希望した。

 
ロームシアター京都での研修

ロームシアター京都では、前半の3ヶ月は劇場の施設や管理を行う管理ライン、後半の3ヶ月は自主公演の制作等を行う事業ラインで研修を行った。まず、管理ラインでの研修では、オープンを控えた劇場ならではの業務を経験することができた。開館前の劇場内覧会や開館記念式典に関する一連の準備と実施の中で、新しい劇場に寄せる京都市民の意識の高さを身近に感じ、劇場が特定の人のためのものではなく、様々な人にとって開かれた場になり得ることを実感した。事業ラインでの研修では、自主事業の制作業務に携わり、楽屋の設営、出演者の対応、ケータリング管理等の現場業務のほか、公演チラシの発送やプログラムの校正など、公演に係る様々な実務を経験した。

研修を通して、地域のニーズに合った公共文化施設の使い方を再考する意義があると感じ、沖縄のように地域色が強い土地での文化施設の在り方についてあらためて考えるきっかけになった。また、旧京都会館の外観を残したまま、リフォームによって生まれ変わったロームシアター京都のように、京都では既存施設の再活用が盛んだ。そうすることで、その地域の歴史や文化を伝える役割を担っている事例が多くある事からも、学ぶ点があるのではと感じている。

 ・現在の活動

研修終了後、2016年4月より、研修前に勤めていた沖縄県文化振興会にて、あらためて文化専門員として勤務をしている。沖縄県文化振興会は、文化芸術の普及啓発に寄与する事業、観光と文化を結びつける事業、人材育成に寄与する事業、助成事業、調査事業などを行っており、2016年度は、「おきなわ文学賞」と「第61回文部科学大臣杯全国青年弁論大会」の2事業を担当。県民への文学賞の周知、関心を持ってもらうために、Facebookページの開設や、パンフレットのデザインの工夫、外部とのコラボレーションなど、研修での経験を生かしながら、様々な取組を進めている。今後も、京都での研修で得た経験を生かして、沖縄の地域に根差した文化芸術の振興の可能性を深めていきたい。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

石山 裕也(現在:宜野座村文化センター がらまんホール

【研修先】公益財団法人石川県音楽文化振興事業団/石川県立音楽堂
【研修期間】平成27年10月5日~平成28年3月31日


・研修先と志望動機

石川県立音楽堂にて、約6ヶ月間の研修を実施。宜野座村文化センター・がらまんホールにて、事業に関する企画や運営を行うスタッフとして勤務していたことから、研修を通して他の地域の劇場ではどのような運営や取組を行っているのか知見を広める事で、新しい沖縄の魅力やがらまんホールならではの強みを再発見できるのではないか、との思いから研修を志望した。
石川県立音楽堂には、首都圏の劇場ではなく地方で独自の活動を行っている劇場で学ぶことで、沖縄の中でも那覇から距離がある宜野座村でのホール運営のヒントが得られるのではと期待。また石川県立音楽堂はオーケストラを持ち、音楽を通した地域や地元の学校との繋がりが深い。さらに邦楽ホールも所有していることから、地域芸能も含めた多様な事業を学べるのではないかと考えた。

石川県立音楽堂での研修

月に1本ほどのペースで自主事業に関わり、制作補助として事業の立ち上がりから本番までを担当した。石川県立音楽堂が企画制作を行ったオペラ「滝の白糸」では、稽古立ち会い、打ち合わせなどの調整を行った。この作品は、石川県出身の文豪・泉鏡花の小説「義血侠血」を原作とし、演奏はオーケストラアンサンブル金沢に加え、地元の市民コーラスグループも参加。地域の特色を活かした舞台制作を体験し、沖縄でもこのように劇場が地域を巻き込んでいけるような事業を展開していきたいと、自身の課題を見つけることができた。

また、オーケストラアンサンブル金沢のコンサートスタッフとしても関わり、東京の紀尾井ホールやサントリーホールでのツアー公演など、他劇場での公演も経験する機会に恵まれ、様々な劇場の特徴に触れることができた。

研修の最終月には、自身が所属している創作エイサー団体の石川県立音楽堂での公演を担当。企画立案から事業に関する予算管理、広報活動、音響・照明・舞台技術とのテクニカル部分での打ち合わせなど、公演実施までの流れを経験し、またエイサーを通しての地域を越えたネットワーク構築にも力を注いだ。

・現在の活動

研修終了後も、がらまんホールのスタッフとして石川県立音楽堂と引き続き連絡を取り合い、交流を続けている。創作エイサーのメンバーとして、2016年11月には2回目の石川県立音楽堂での公演を行った。また、子どもエイサーのメンバーが、石川県立音楽堂・邦楽ホールで開催される石川県内の学生を対象とした伝統芸能祭に出演することが決定。石川県と沖縄県の芸能を学ぶ子どもたちの交流も進めている。

また、石川県から、研修を通して人脈を得た木管アンサンブルのメンバーをがらまんホールに招聘し、沖縄で活躍する演奏家との共演を企画、実現した。

研修を経て、石川県立音楽堂の職員の方を含め、実演家、制作に関わる方々と多くの出会いがあり、あらためて沖縄の魅力やがらまんホールならではの活動の意義などを考えるきっかけとなった。研修を通して得られた県内外のネットワークを活かし、今後、連携事業など新たな活動に繋げていきたい。多くの課題や目標を発見できたので、さらに視野を広げ挑戦する気持ちで今後の企画に取り組んでいきたい。

 

基調講演『文化の力で人と人をつなぐ』 西川信廣(演出家・文学座所属)のレポートはこちら

一覧へ戻る

ARCHIVES