GEIDANKYO 公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会[芸団協] 芸能花伝舎 沖縄県

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2015.02.04

平成26年度アーツマネジメント研修派遣 中間報告会(1月26日)レポート

2015年1月26日(月)、東京・西新宿の芸能花伝舎にて、「平成26年度アーツマネジメント研修派遣 中間報告会」が開催されました。
当日は文化施設や芸術団体の関係者、地方自治体の文化行政担当の方など約70名の方にご参加いただき、全国に先駆けたこの沖縄県の取組に対して関心を持っていただけたものと思います。

DSC02145DSC02152まずは、沖縄県文化観光スポーツ部文化振興課の大城直人課長、事務局代表として公益社団法人日本芸能実演家団体協議会[芸団協]の田澤祐一常務理事から開会の挨拶。
研修者の今後の活躍への期待が述べられ、報告会がスタートしました。






DSC02159研修者からの報告に入る前には、芸団協の藤原職員より、「アーツマネージャー育成事業」について概要の説明を行いました。2014年6月~10月にかけて実施した連続講座、研修派遣についての流れ、本事業についての将来的な展望をお話しました。

研修者報告の1人目は、1月13日より文学座にて研修中の大野順美さん(残念ながら急な体調不良により欠席のため、芸団協・藤原職員が代読しました)。
行政をはじめ様々な文化事業に携わってきた大野さん。組踊をもっと広めたいという信念でお仕事を続けてこられましたが、ご自分が沖縄で活動するにあたって何が課題となっており、また今回の研修に何を求めているのか、その意気込みが伝わってくる報告でした。

DSC021892人目は、1月12日より東京芸術劇場にて研修を開始した宮城紫乃さん。
約1年間の研修を通して、貸館、広報、営業、制作(音楽、演劇、ダンス)、劇場運営、教育普及など、東京芸術劇場が取組む様々な事業に携わることが計画されています。当日は研修開始からまだ2週間足らずでしたが、東京での暮らしに戸惑いながらも、東京芸術劇場のスタッフをはじめとする芸術関係者と親交を深めている様子でした。





DSC022193人目は、1月13日より独立行政法人日本芸術文化振興会(国立劇場)で研修を開始した上原航一さん。
上原さんは、沖縄ツーリストに在職中。琉球古典音楽の実演家でいらっしゃるお父様の影響で沖縄の伝統芸能に親しんでおり、沖縄の芸能と、自身の専門である観光を結びつけた事業展開を考えたいという思いから、国立劇場で公演の営業を中心とした研修が予定されています。団体観劇や鑑賞教室の営業、団体用宣伝媒体の作成、団体観劇に伴う食事やイヤホンガイドの手配、受注した団体観劇の当日対応などの実際を体験しているそうです。


DSC022814人目は、12月8日より、秋田県仙北市のわらび座にて研修中の北住景子さん。
タオファクトリーに在職しており、現代版組踊にも力をいれていらっしゃいます。「わらび座のような芸術村を沖縄にも作りたい」という明確なヴィジョンを持つ北住さん。日々の実務研修に加えてたざわこ芸術村のスタッフの方々へもヒアリングを行い、現況の分析や課題を抽出した、とても見ごたえのあるプレゼンテーションでした。研修期間は折り返し地点を迎えましたが、残りの期間もいっそう充実した毎日になることを期待します。




DSC023015人目は、11月4日より劇団青年劇場にて研修中の喜舎場梓さん。
劇団TEAM SPOT JUMBLEで制作を担当する喜舎場さんが課題として掲げたのは、「演劇に関するノウハウ」「沖縄県内での演劇浸透率」「資金調達」の3点。これを解決する手段を青年劇場の劇団運営・公演制作の中に見出し、その分析結果を「チケット」「文章力」「友の会」「定期公演」「ミニマム」の5点に集約して発表しました。制作実務を中心とした多忙な研修の日々を送りながらも、青年劇場をはじめ他劇団へのヒアリングや、研修期間を生かして舞台鑑賞も積極的に行うなど、貴重な研修機会を活用しています。



DSC023306人目は、10月20日より研修中の吉田真和さん。
琉球舞踊の実演家でもあった彼女は、琉球舞踊の振興や、組織の法人化について強い使命感を持っていることから、沖縄芸能の普及にも力を入れる横浜能楽堂と、日本舞踊家の統括団体でありながら自主事業を多彩に展開する公益社団法人日本舞踊協会の2か所で研修を行っています。研修期間中に横浜能楽堂で行われた琉球舞踊公演では、自身の専門性を生かしながら、第三者の視点で沖縄芸能に携わる機会が得られたようです。日本舞踊協会では、学校巡回公演、公演事業など、協会組織として事業を行う意義を考えるなど、沖縄では得難い経験がたっぷりと蓄積されたのではないでしょうか。


DSC023687人目は、10月13日~12月28日にかけて石川県立音楽堂で研修を行った大崎正和さん。
沖縄、特に地域における音楽活動においての課題を抱えており、地域に根ざしながらも他劇場との連携事業も積極的に行っている石川県立音楽堂で研修を行うことで、自身が抱える課題の解決の糸口を探ることをミッションとされていました。実演家としても経験豊富な彼ですが、普段と異なる環境の研修では新たな気づきがたくさんあったとのこと。研修を経て着想した課題解決のプロセスを7項目に分類し、今後どのように実践していくべきかプレゼンしました。研修は終了し、沖縄に戻られたこれからの活動にも注目していただきたいです。



DSC02425研修者からの報告に続いては、研修先となった文化施設や芸術団体の指導担当者から、研修受け入れに関してのご意見をいただきました。








DSC02405「研修受入の依頼があった時に、石川県立音楽堂は絶対にお断りしません!」と力強いお言葉をくださったのは、石川県立音楽堂オーケストラアンサンブル金沢の岩崎巌 事業部長。「物理的な制約もあり自分たちが拠点地外に出るのは難しいが、ほかの施設や芸術団体から研修者が来れば、(自分たちが拠点地に)居ながらにしていろいろな情報が入ってくる」ことが研修受け入れの最大のメリットだとおっしゃいます。これまでも研修という名目で受け入れをしてこられたそうですが、あえて系統立てた研修プログラムは設けず、それぞれのバックグランドに沿った実務研修を行っているとのことです。



DSC02419横浜能楽堂の中村雅之 館長は、このアーツマネージメント研修派遣の制度を高く評価した上で、研修の在り方について具体的な提案をしてくださいました。「制作の実務能力を身につけるにはある程度の長期間の研修が必要だが、実演家団体の組織化のノウハウを得るというような明確なミッションがある場合は、短期集中で複数の組織を見てまわるのも有効なのではないか」とお話しくださいました。





DSC02421「研修受入の話が来たとき、最初は正直少し迷った」と語るのは、文学座の日下忠男 企画事業部長。60年以上ある文学座の歴史の中でも、外部から研修者を受け入れるのは実に初めてとのことですが、公立劇場の連携やワークショップの開催など、劇団として多角的な事業を展開していく中でアーツマネジメント人材の必要性を痛感されていたそうです。「結果的には研修に来てもらって本当に良かった」と仰られ、「外からは見えない部分を可能な限り体験していただきたい」とお話しくださいました。





DSC02428DSC02439最後に、この「沖縄県アーツマネージャー育成事業」の協力団体である、一般社団法人沖縄県芸能関連協議会[沖芸連]の下山久 事務局長と、公益財団法人沖縄県文化振興会の杉浦幹男プログラムディレクターから閉会の挨拶。
今後の沖縄の文化芸術の発展を担うべき人材に対しての期待と、その育成に対して頼もしいお言葉を頂戴しました。





DSC02532当日は70名を超える参加者に加え、Ustreamによるインターネット中継も延べ160近い視聴者数となり、大盛況のうちに閉会となりました。





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